P4Eワークショップ「恋する身体-アナタとワタシが出会うとき-」

2014年2月8日(土)、東京大学駒場キャンパス・コミュニケーションプラザ北館3階・身体運動実習室3にて、P4Eワークショップ「恋する身体-アナタとワタシが出会うとき-」が行われた。

10年に一度の大雪警報が発令され、雪が降りしきる中、バレンタイン特別企画P4E哲学ドラマワークショップが開催された。大雪にも関わらず、大勢の参加者が駒場に集まり、大変にぎやかな楽しいワークショップとなった。哲学ドラマワークショップは、昨年11月の駒場祭での第1回目に引き続き、2回目の開催となる。今回も、当事者研究に従事されてきた福士侑生さんと、福士さんの仲間、日野麻衣子さん、弓井茉那さんの3名によりファシリテートしていただいた。海外では、アプライド・ドラマを用いることにより、演劇を通し客観的な自己の把握などが可能になり、例えば摂食障害や自閉症のような症状に改善が見られるケースがあるようだ。今回は、バレンタイン特別企画ということで、シェークスピアの喜劇「夏の夜の夢」を題材に、実際に「夏の夜の夢」の登場人物を参加者一人一人が選び、登場人物を演じることにより、愛するとは何か、ということについて体感しつつ、考えてみるワークショップであった。

drama1.JPG

ワークショップでは、まずはウォーミングアップとして身体を動かしつつ、色々な質問にYesかNoで答えるワークを行った。それぞれの参加者は、質問の回答に合わせ、YesかNoのグループを作る。その後、自分にとって重要な恋愛体験の地図を、参加者全員で作ってみるというワークを行った。予め方角(東西南北)だけ決め、参加者全員が「ほうとう」「パイナップル」などのようにキーワードのみを相手に伝えることにより、少しずつ互いのキーワードを聞きつつ、体育館内で人間地図を作っていくというワークであったが、意外にも正確な人間地図が作成され面白かった。

ウォームアップが終わったところで、いよいよ「夏の夜の夢」に入っていく。「夏の夜の夢」は、ハーミアと、ハーミアの友人でディミートリアスが好きなヘレナ、ハーミアに片思いのディミートリアス、ハーミアと両想いのライサンダーの4名が織りなす四角関係の恋物語。ワークショップでは、彼ら4名の登場人物の背景と人間関係が説明され、それぞれの参加者が登場人物を選び、ワークを進めていく。基本的には、「夏の夜の夢」のエピソードを参加者達が実際に追随体験することにより、「愛するとは何か」ということを、ワークを通して感じ、考える。実際に行われたワークを下記にまとめる。

drama2.JPG

ワーク1) 参加者それぞれが選んだ役に基づき、4つのグループに分かれ、物語の設定上で好きな相手のグループの中から1人を選び(ハーミア役ならライサンダー役のグループから1人選ぶ)、選んだ人を追いかけることにより、物語の中の四角関係を体感する。

ワーク2) ディミートリアスとライサンダーから愛されているハーミアが、ライサンダーと駆け落ちをするエピソード。目を閉じたハーミア役とハーミアの手を引いて歩くライサンダー役の参加者が、他の参加者が腕や手を使って作った夜の森のトンネルを歩くワーク。

ワーク3) ハーミアとライサンダーを追いかけるディミートリアスを、ヘレナが追いかけるエピソード。他の参加者が腕や手を使って作った夜の森のトンネルの中、先に行くディミートリアスを、ヘレナが追いかけるのだが、ディミートリアスが冷たくふりほどいて逃げるワーク。

ワーク4) 森の中、ハーミアの傍で眠りたいライサンダーのエピソード。参加者が4つのグループに分かれ、どのようにしたらハーミアの傍で眠れるかどうか戦略を練り、それぞれのグループからハーミアとライサンダー役の人を出し、演じてもらうワーク。

drama3.JPG

様々なワークの後、ワークを通して感じたこと、考えたことなどをグループの中で哲学対話する。「愛」「愛すること」について、様々な年代の参加者が、それぞれ考えたことを伺えるのは、大変興味深かった。私が参加させていただいたグループでは、「愛とは幻想に過ぎず、自分の鏡像や、自分が愛したい相手の部分だけを過大評価し、それを愛しているだけなのかもしれない」という発言があり、私自身も色々と考えさせられた。カトリック系ミッションスクールで育った私は、宗教の時間に教わった「愛とは寛大、愛とは赦し」であると答えるのが正解であると教えられて育ったのだが、一般的に理想の愛と現実の愛とのギャップに悩むのは、まさに「愛」が押しつけの自己満足的なものに陥りがちな傾向にあるためなのかもしれないとも思った。

drama4.JPG

最後に、参加者のお子さんから選ばれた妖精パックにより、「夏の夜の夢」の魔法が解かれ、ワークショップの終了となった。ワークショップ終了後は、福士さんが何故、アプライド・ドラマを利用した研究をしているのかという簡単なレクチャーがあった。今回のワークショップは、事前の進行づくりに始め、演劇の練習、音響や照明の設定など、色々細かな部分まで緻密に作り込まれており、参加者がすんなりと「真夏の夜の夢」の世界を体感できたのも、福士さん達の入念な事前準備の賜物だと感じた。素晴らしいワークをファシリテートして下さった福士さん、日野さん、弓井さんには、楽しい一時を演出して下さったことに対し、心から拍手を送りたいと思う。

(報告:佐藤麻貴)

※転載元 http://utcp.c.u-tokyo.ac.jp/blog/2014/03/p4e/